平成18年1月4日
新型インフルエンザに関する情報と注意喚起
総合安全衛生管理機構
1. はじめに 新聞、テレビなどで「新型インフルエンザ」について報道される機会が増えました。WHO(世界保健機関)は「新型インフルエンザ」が流行した場合、最悪のケースでは世界で4億人が罹患し、700万人が死亡する可能性があると警告しています。実際「新型インフルエンザ」とはどういうものなのか、そしてそれに対してどう対処していくべきかをまとめました。 2. 新型インフルエンザとは 数年前から「鳥インフルエンザウイルス」が話題になっています。日本でも茨城県などの養鶏場で流行し、多数の鶏が処分されたのは記憶に新しいところです。この「鳥インフルエンザ」は「鳥→鳥」のみに感染するのが普通ですが、東南アジアを中心に「鳥→人」への感染がみられ、平成17年12月現在、世界で70数名の死者が出ています。この鳥インフルエンザが変異し、「人→人」への感染が出た場合、それを「新型インフルエンザ」と呼びます。現在までのところ「人→人」への感染は確認されていませんが、もしも新型インフルエンザが出現した場合、人類の大部分はこのインフルエンザウイルスに対して全く免疫を持っていないため、爆発的な大流行(パンデミック)を起こす可能性が高いと言えます。厚生労働省の試算で、もしも日本で新型インフルエンザが発生した場合、最悪のケースでは2,500万人が罹患し、200万人が入院、30〜60万人の死者が出ると考えられています。 WHOでは新型インフルエンザの流行状況をフェーズ1〜6に分類しています。
フェーズ3(鳥→人):人への感染はあるが、人→人の感染拡大はない。 フェーズ4(人→人):人の感染集団は小さく限られている。 フェーズ5(人→人):大きな集団発生が起きてくる。 フェーズ6(パンデミック):一般社会の中で爆発的感染が起こる。 従来のインフルエンザでは、死亡の原因は主に肺炎や脳症でしたが、新型インフルエンザでは、これらの進行が早く、さらに肝不全、腎不全などの多臓器不全が重なるため、死亡率も高くなります。鳥インフルエンザが変異し、「人→人」感染を起こすのは「時間の問題」と述べる専門家も多く、対策が急務となっています。 3. 予防と症状 現在のところ確実な予防法はありません。無論、手を洗う、うがいをする、マスクを着用する、人ごみの中に出ないなど、従来のインフルエンザに対して予防効果があることは積極的に行っていく必要があります。しかし新型インフルエンザに対して有効なワクチンが開発されるためには、「人→人」感染を起こす新型インフルエンザが発見されてから、半年〜1年の時間が必要です(現在、従来のインフルエンザ予防のために接種されているワクチンは新型インフルエンザには無効です)。 症状は、突然悪寒がし、38℃以上の高熱や関節痛、頭痛などが出現することは従来のインフルエンザと同じです。この段階で早急に医療機関を受診することが重要です。また発熱前の数日以内に、病気の鳥に接触した場合は、その旨医師に申し出ると良いでしょう(健康な鳥なら大丈夫です)。 4. 治療 発症後できるだけ早く(遅くとも48時間以内に)、医療機関で処方される抗インフルエンザウイルス薬(タミフルなど)を内服開始することが必須です。この時間を越えるとウイルスが体内で増殖し、抗ウイルス薬もなかなか効きません。薬を飲み始めたら安静にして水分を十分に補給しましょう。一昨年流行したSARSとは異なり、罹患しても死亡率は1〜2%と考えられています。しかし、1〜2%と言っても、大流行した場合日本で30万人以上の死者が出るわけですから、できるだけ早く医療機関を受診することが必要です。 一方で新型インフルエンザについては「情報の収集」が非常に重要です。特に東南アジアや中国へ旅行する際には、旅行直前まで新聞、テレビ等さらにはインターネットで情報を収集し、旅行地域で「人→人」感染の新型インフルエンザが流行していないか十分に確認し、万一流行が始まっていたら旅行はできる限り中止してください。 5. 情報源 新型インフルエンザについてはさまざまな機関から情報が出ています。そこにはQ&A形式で詳しい情報が掲載されているものもあります。信頼できる情報源を列挙します。 厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/ 国立感染症研究所 農林水産省 動物衛生研究所 http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poultry/tori_influenza.html 食品安全委員会 以上
(文責:中田 暁) |